摘要
北海道には、従来「コシヒカリ」のような全国銘柄の良食味品種はなく、産米の食味評価が低かった。そこで、北海道立(現、道総研)農業試験場の水稲育種では、1980年から28年間の良食味品種早期開発プロジェクトを行った。そこでは、早期開発のために世代促進栽培や葯培養により育種年限を短縮した。また、良食味や耐冷性の内外有用遺伝子を活用し、良食味と早熟性や耐冷性を同時に有する品種開発のため、育種規模を拡大した。効率よい良食味系統選抜のため、初期世代から精米蛋白質含有率および特にアミロース含有率により、中期世代で少量炊飯により選抜を実施した。食味の遺伝的改良では、最初に北海道品種の良食味遺伝子を集積し「ゆきひかり」を、次に北海道品種を通して「コシヒカリ」の良食味遺伝子を、さらに直接交配母本とし東北品種「あきたこまち」の良食味遺伝子を導入し、各々「きらら397」と「ほしのゆめ」を育成した。アミロース含有率はそれまでの多肥多収品種の22%から2%低下した。さらに、米国品種「国宝ローズ」の良食味遺伝子を導入した「ななつぼし」を育成し、アミロ-ス含有率が1%低下した。その後、培養変異低アミロース系統「北海287号」を母本とし、アミロース含有率が15%~16%で「粘り」と「柔らかさ」に優れ、「コシヒカリ」に並ぶ食味を有する「ゆめぴりか」を育成した。